2012年12月14日金曜日

ソバ屋にご用心



 運が悪い、ついていない、そんなことを駅の立ち食いソバ屋で味わうとは思ってもみなかった。

 JR品川駅を降りたとき、正午まで20分ほどあった。 まだ昼飯には早く、腹もさほど減ってはいなかった。 だが、電車のドアから出たホームの目の前に立ち食いソバ屋があり、とたんに、B級グルメとして愛してやまない掻き揚げソバを食いたくなって、入ってしまった。 これが第1の失敗。

 食券売り場の横の壁に「店内での写真撮影はご遠慮ください」と妙な張り紙があるのに気付いた。 近ごろは、注文した食事を携帯電話のカメラでバチバチ撮るのが普通なのに、うるさい店だと思った。そこで出て行かなかったのが第2の失敗。

 食券を買うとき、掻き揚げソバが520円とは高いなと思ったが、カネを入れてボタンを押した。 これが第3の失敗。 すぐに気付いたが、520円は「掻き揚げ温玉ソバ」で「掻き揚げソバ」は420円だった。面倒なので、店員に頼んで訂正はしなかった。 これが第4の失敗。

 出てきたドンブリのソバの上には、掻き揚げと半熟のゆで卵がのっていた。 これが「温玉」つまり温かい卵と思って口にしたら、冷蔵庫から出したばかりの冷たさだった。 これでは冷玉ではないか。
 
 そして、掻き揚げ。これを汁に溶かしてタヌキ蕎麦風にして食うのがオレ流。 だが、この店の掻き揚げは、箸でいくらつついても硬くてくずれない。 うどん粉を練ったかたまりに、野菜らしき切れ端がほんの少し混ぜてあるだけで、どっしりと重い。

 近ごろはレベルが上がっているとはいえ、駅ソバなど美味いわけがない。 だが、それを承知の上で、安い価格で許容範囲の不味さを楽しむのが駅ソバの醍醐味だ。 JR品川駅は、久しぶりに、おそらく前世紀以来の許し難い不味さを体験させてくれた。

 今、冷静になって振り返ってみると、ヘンだと感じたときに店を出るか、注文をやめるべきだった。 不運を自分で何度も呼び込んでいたことを実によく理解できる。 これから気を付けよう。

 まあ、今後の人生訓を学ぶ機会を得たと考えれば幸運だったのか。 それにしても、腹立たしいほど不味かった。 

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