2013年2月8日金曜日

女子柔道へエールを送ろう



 日本人のどれだけの人々が本当に驚いているのだろうか。 実は、誰もが身近で見聞きし、知りすぎるほど知っていた醜悪な光景だ。 われわれ日本人には当たり前すぎたことが、なぜ突然、大きなニュースになったのだろうか。

 全日本女子柔道や大阪・桜宮高校バスケットボール部で明らかになった選手に対する指導者による暴力のことだ。 従来見て見ぬふりをされていたことが問題視されるようになったのは、明らかに、時代が変わったからだろう。

 かつては、「かつて」というのはどこまで遡るのか、よくわからないが、学校生活の中で、体育会系部活の暴力は、日本で生まれ育った日本人なら、誰でも日常茶飯事のこととして知っていた。 よほど度が過ぎなければ、黙認されていた。

 体育会系が幅を利かせた国士舘大学の学生は、東京・世田谷の三軒茶屋を支配する暴力団みたいなものだった。 警察だって黙認していた。 普通の女子学生が入学して普通の大学に見えるようになったのは、20世紀も終ろうとするころだった。

 日本のスポーツ選手が、無論、例外はあるが、おおむねバカにみえるのは、長いあいだ温存されていた異常で特殊な暴力支配世界に生き、自由な思考をする訓練をしてこなかったからであろう。 種目によって、バカさ加減、暴力度はかなり異なるが、ここではそこまで言及しない(それに、知性と教養のあるアスリートだって、もちろん存在する)。

 女子柔道選手たちが、指導者の暴力、ハラスメントを告発したのは、日本のスポーツ史上、革命的な出来事と言っていいだろう。 おそらく、告発された側は、まだ罪の意識を十分感じていない。 内心、告発を憎々しく思っているはずだ。

 柔道以外のスポーツ種目の団体・組織も反応はにぶい。 これをきっかけに、積極的に自ら内部浄化に乗り出すべきなのに、彼らは知らんぷりを決め込んでいるようにみえる。

 スポーツ団体幹部というのは、おおむね政治的には単細胞の保守派だ。 保守系政治家からすれば、こんなに操りやすい連中はいない。 大いに利用して、オリンピックを招致すれば、大喜びで言うことをきいてくれる。 国会議員にでもしてやれば有頂天になる。

 東京オリンピックというのは、こういうシステムの中で推進されている。 バカものたちにカネを使わせ、スターに祭り上げる茶番劇。 それによってナショナリズムを煽り、反動的保守支配を固めようとする政治的陰謀。

 女子柔道選手たちは、単に暴力を嫌悪しただけだったのかもしれない。 だが、彼女たちの意図にかかわらず、日本の支配体制の暗部を暴くという禁じ手を仕掛けることになったのだ。 この技は、一端仕掛けてしまうと禁じ手ではなくなってしまう可能性がある。 しかも大津波に育つ危険性を秘めている。

 スポーツ新聞や週刊誌のスキャンダラスな報道に引きづられてはいけない。 本質的問題から目をそらそうとする姑息な手口なのだ。

 注意深くみつめ、目をそらせないでいよう。

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