「独立行政法人・日本政府観光局」という生い立ちに不可解さの臭いがしなくもない名称の政府機関が9月18日に、8月の日本を訪れた外国人旅行者数は90万人を超え、前年同月比で17.1%増となったと発表した。 この調子で増えれば、2013年の年間政府目標1000万達成が可能だという。
こんな政府発表ニュースをテレビや新聞が報じても、われわれ一般納税者には、東日本大震災の復興がうまくいっているとか、アベノミクスの成果が上がっていると宣伝する政権の情報操作以外にどんな意味があるのか、よくわからない。
例えば、「1000万」という数字を自慢げに強調するが、この”成果”はどう評価すべきなのか。
この発表をした「観光局」のホームページで、2012年の「世界各国・地域への外国人訪問者数」を見ると、日本は835万人で世界で33番目。 とても自慢できる数字ではない。
アジアでは、世界3位・中国の5772万を筆頭に、マレーシア(10位)2503万、香港(12位)2377万、タイ(15位)2235万、マカオ(13位)1357万、韓国(11位)1114万、シンガポール(25位)1039万と続く。 日本が1000万に達しても、世界ではモロッコを抜いて、やっと28位だ。 トップのフランスともなれば、なんと日本の10倍の8300万。 フランスの人口は6500万余りだから、それ以上の数の外国人がフランスを訪れるのだ。
観光は今や世界の主要な産業分野のひとつになっているが、日本はここでは決して先進国ではない。 ちなみに、2020年オリンピック開催地で日本(東京)のライバルになったスペイン(マドリッド)は世界4位の5770万、トルコ(イスタンブール)は6位の3569万。 魅力ある訪問地としては、日本とは格が違っている。
「おもてなし」。 悪い冗談だ。 短期訪問の外国人に短期間だけニコニコする。 これなら日本人もできる。 だが、日本に長期滞在する外国人やハーフの子どもたちが、日本の学校で「ガイジン」として陰湿なイジメの標的になっている現実を「おもてなし」というのか。 日本でハーフの問題をずっと追っているサンドラ・ヘフェリンに訊いてみるといい。
おそらく、交通標識に英語を加える程度の上っ面の”おもてなし”でも1000万人の目標は達成できるだろう。 だが、外国人が街に増えれば、日本人の醜さも曝すことになろう。
電車の優先席に座って、寝たふりをして老人を無視するエセ紳士を見れば、”おもてなし”の本音が世界の隅々にまで知れ渡るだろう。