2016年12月16日金曜日

トルコが病んでいる



 12月10日夜、イスタンブールで爆弾テロが発生、警察官など30人以上が死亡した。 事件現場は、かつてイスタンブールに住んでいたとき、とても馴染みのある場所だったので、今遠く離れて日本にいるのに、ぎくりとした。

 現場は、トルコのサッカー人気チーム「ベシュクタシュ」の本拠地ヴォ—ダフォン・アリーナのすぐ近く。  ボスポラス海峡が目の前、アリーナの横の急な坂道を上ると、東京で言えば銀座に当たるタクシム広場とイスティクラル通りに出る。 外国人訪問者も多い観光地だ。 このアリーナは坂道の中腹からグラウンドを覗くことができるので、試合のあるときはタダ見の人が道路際に群がり、クルマの通行が妨げられることがある。

 爆弾事件が発生したのは、その夜のゲームが終わって2時間もたってからだった。 直後であれば犠牲者の数は計り知れない。

 おそらく、実行者は観客が溢れている時間の無差別テロを狙ったが、警戒が厳しくて断念したのだと思う。 試合を見るために、アリーナに入るには厳しいセキュリティ・チェックを通らなければならない。 ポケットのコインすら 帰りに出口で返してくれるものの。取り上げられる。 飲み物のガラス製ボトルも許されない。 出入り口だけでなく、周辺地域も多数の警察官がパトロールしている。

 最近の状況は知らないが、トルコ各地で以前よりも過激なテロ活動が頻発している。 警戒がはるかに厳重になっていたのは間違いない。

 トルコでは長年にわたる政府の弾圧政策のせいで、クルド人の反政府活動が活発に続いている。 このため国民に対する監視も厳しい。 外国人ジャーナリストの電話も盗聴されている。 電話でクルド人活動家と会う約束をし、会合場所に行って、待機していた警察官に身柄を拘束されたこともあった。

 今と比べれば、当時の治安状況ははるかに良かった。 それでも、当局の視線を感じて生活するのがイスタンブールだった。 現在、監視はずっと厳重になっているはずだ。

 それにもかかわらず、大規模なテロ事件が発生する。 トルコは病んでいる。 独裁体制を固めようとする大統領エルドアン、隣国イラクとシリアから感染する政治不安、いろいろな病原菌が入り混じってトルコ社会を冒している。

 イスタンブールでテロが起きた直後、Facebook を通じて、トルコ人の友人から安全確認の通知が届いた。 本当にほっとした。 トルコはこんな国ではなかったのに。    

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