黒いスーツをきちんと着た男が、大きな箱を載せたカートを押しながら、マンションの玄関から出て行った。
その後ろから、くたびれたラクダ色のカーディガン、膝の抜けた茶色いコーデュロイのズボンの中年男が、ぼさぼさの髪で、サンダルを履いてついていく。 同じような年頃、しわだらけのスカート、憔悴した表情の女が寄り添っていた。
箱は、おもてに停めてあったワゴン車に移され、スーツの男が深々とお辞儀をし車を運転して去っていった。
そのとき、やっと気が付いた。 人が死んだのだ。
葬儀屋が遺体を引き取り、家族と思われる夫婦が見送っていたのだ。 どんよりと曇った寒い晩秋の午後の光景。
東京の大規模マンションの住民は、自分の頭の上の階で人が生まれても死んでも気付かない。マンションの入り口には「忌中」の張り紙もなく、葬儀はどこか遠くの”セレモニーホール”で行われる。
われわれ都会人は、「希薄な人間関係」という幸せを数千万円かけて手に入れているのだ。
その後ろから、くたびれたラクダ色のカーディガン、膝の抜けた茶色いコーデュロイのズボンの中年男が、ぼさぼさの髪で、サンダルを履いてついていく。 同じような年頃、しわだらけのスカート、憔悴した表情の女が寄り添っていた。
箱は、おもてに停めてあったワゴン車に移され、スーツの男が深々とお辞儀をし車を運転して去っていった。
そのとき、やっと気が付いた。 人が死んだのだ。
葬儀屋が遺体を引き取り、家族と思われる夫婦が見送っていたのだ。 どんよりと曇った寒い晩秋の午後の光景。
東京の大規模マンションの住民は、自分の頭の上の階で人が生まれても死んでも気付かない。マンションの入り口には「忌中」の張り紙もなく、葬儀はどこか遠くの”セレモニーホール”で行われる。
われわれ都会人は、「希薄な人間関係」という幸せを数千万円かけて手に入れているのだ。
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