先月、新聞の折込広告をパラパラとめくっていて、トヨタの中古車店の広告が目に留まった。 車に興味はなかったが、来店者にタジン鍋をプレゼントというのに惹かれた。
タジン鍋というのは、北アフリカ・モロッコの伝統的な鍋で、ふたが富士山のような形状をしている。 なぜか近頃、日本で流行っている。 それがタダで貰えるというので、トヨタに行ってみた。
店の駐車場にマツダを乗り入れると、すぐに従業員が近づいてきた。
「すみません、タジン鍋もらえるという広告、見たんですけど」
「そうですか、どうぞこちらへ」
「そうですか、どうぞこちらへ」
中古車店のオフィスに案内され、すぐにタジン鍋、それに鍋料理に使うネギ、ニンジンまで手渡してくれた。 さすが世界のトヨタ!
こちらは、そのまま帰るほど図々しく振舞えなかったので、一応、展示場の中古車を見ることにした。
たまたまハイブリッド車のプリウスの前で立ち止まった。 そのとき、年配の案内担当者が非常に興味深い説明をしてくれた。 「ガソリン車と比べ、燃費はいいんですが、どなたにも勧められるかどうか、というと難しいですね」と言うのだ。
その説明によれば、問題はプリウスというクルマの核、バッテリーにある。 ガソリン車でも駐車場に置きっぱなしにしているとバッテリーがあがり、寿命が短くなる。 プリウスのバッテリーはガソリン車と比較にならないほど大きいが、日常あまり運転しなければ同じことが起きる。 しかも、大きいだけに交換となると費用はただごとではない。
さらに、プリウスの燃費の良さが発揮されるのは、混雑した都会の道路だという。 低速走行のとき、動力源としてバッテリーが多用されるためだ。 逆に、快適な高速道路などではバッテリーで重くなった車体をガソリンエンジン主体で動かすために、普通のコンパクトカーなどと燃費の差があまり出ないそうだ。
そういうわけで、その担当者は、都会をひんぱんに運転する人にはプリウスを勧められるという。 だが、たまの休みにしか運転しないという大多数のサラリーマンには、価格も維持費も高くつくかもしれないと非常に率直に語った。
ハイブリッドカーが本当にエコなのか、ecology と economy の両面から、「プリウス問題」が騒がれている今、考えるのはいいことだ。
それにしても、ブレーキのリコール騒ぎでマスコミから叩かれているが、トヨタはすごいと思う。 車を買う気のない客にタジン鍋をプレゼントし、プリウスの使い勝手まで正直に説明してくれるのだから。
とはいえ、面白みと個性のないトヨタ車を買う気は、まったく起きない。 トヨタを買うときは、冒険に満ちた人生という夢を捨て、安心に身をゆだねるときだろう。
きっと、誰もがそうなのだと思う。 そして、たいていの人は安心を求める人生を生きている。 だから、トヨタは売れ、ちょっとした欠陥で世の非難を浴びるのだ。
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