ドイツで、強い毒性を持つ腸管出血性大腸菌(EHEC)に汚染された食べ物で多くの死者が出たというニュースが伝えられた。 しばらくして、その食べ物とは「もやし」と特定されたと日本のメディアは報じた。
「もやし」と聞いて意外と思った日本人は多いだろう。 「ソーセージとジャガイモしか食わないドイツ人」というイメージが一般的だろうし、そう言ってドイツ人をからかっても、真っ向から否定するドイツ人は少ないからだ。
ドイツ人がもやしを食べるとすると、一体どうやって食べるのだろうか。 素朴な疑問ではないか。 取材の甘い日本のメディアは教えてくれない。
で、東京に住むドイツ人の女友達にきいてみた。 だが、あまり要領を得ない。 ドイツ人はもともと食べないが、最近の中国料理ブームで食べるようになったのではないか、と推測するが、中国料理なら、もやしに熱を通して調理するだろう。 今問題になっているもやしは、生で食べた人が犠牲になっている。 もやしを生で食べるのはアジアでも、あまり一般的ではなく、ベトナム料理の生春巻きやフォー(うどん)など限られている。 味覚音痴のドイツ人なら生で食べかねない、などとは言わない。
結局、東京のドイツ大使館に電話できいて、疑問は解けた。
彼らが食べているのは、もやしであって、もやしではなかった。 アルファルファなどのスプラウト類、もやしと同じ豆の新芽だが、かいわれ大根みたいに細くて歯ごたえは、日本人の食べるもやしより、はるかに柔らかい。 サラダ用スプラウト Salatsprossen だったのだ。 これなら日本のスーパーにも売っているし、日本人もサラダで食べる。
英語だったらsprout、和訳すれば「もやし」だが、「スプラウト」と「もやし」は似て非なるものだ。
だが、その危険性となると、「もやし」も「スプラウト」もへったくれもなく同じらしい。
昨年(2010年)8月、イングランドとスコットランドで生もやしとの関連が疑われるサルモネラ感染症が多数発生し、英国食品基準庁(FSA)は9月に、もやしの「調理法に関する助言」を公表した。
①完全な加熱調理。大きなもやしを炒め物に加えるときは数分間煮立てる②生もやしは徹底的にすすぐ③茶色に変色、あるいは異臭を発するものは食べない④使用期限を厳守⑤冷蔵庫に保管etc
Wikipedia日本語版の「もやし」の項目にも、「豆もやしは大腸菌をはじめとする細菌が増殖しやすい食品であり、消費者が購入する時点で平均して1g当たり100万~1000万の細菌があるといわれている。そのほとんどは人間に害のない細菌だが、食中毒菌についても増殖しやすい食品であるといえる」と記されている。
米国では、スーパーに売られているスプラウトの袋に「生で食べないように」と米国食品医療局(FDA)の忠告が書かれている(冒頭の画像)。
それでは、日本ではどうなのか。
近所のスーパーに行って袋を詳細に見てみると、確かに、裏に小さく、誰も気付かないように記してあった。 「必ず熱を通してからお召し上がりください」と。 いかにも、姑息な日本的手口。 東電と同じで不都合なことは目立たないようにさせる。
1袋38円、罪のなさそうな真っ白いもやしが実は、とんでもない危険性を秘めていたのだ。
つまり、ドイツで起きた大腸菌騒ぎが日本でも起こりうるということだ。 これまで日本で、もやしの安全性などが注目されたことがあったのだろうか。 ユッケ同様、信じて食べると殺されるかもしれない。
もやしを沸騰した湯に軽く通すだけで、胡麻油と塩を振りかける。 しゃきっとした歯ざわりが大好きだ。 ビールにも、ワインにも、日本酒にも、焼酎にも合う 得意のアペタイザーだが、とりあえずメニューから外すことにしよう。
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