2012年3月11日。 新聞から拾った「あれから1年」単語集。
この1年で、なんとなく記憶に残った言葉は、東北のどこかの津波被災地で消防署だか消防団のオジサンがテレビで口にした「自己責任」だった。
大津波が差し迫ってきたきたとき、避難の指示を待つよりも、自分のとっさの判断と気転で行動する方がいい場合がある、というような脈絡で話しているときに出てきた言葉だ。
被災地の女性が話していた。 鉄道の踏切遮断機が地震の影響で自動的に降りてしまった。 このため避難しようとする人たちの車が踏切を渡れず行列になった。 背後から津波が来るというのに、彼らは交通規則を守っている。 それを見ていた彼女は「遮断機に突っ込め、津波が来てるぞ!」と運転者に叫んだ。 助かった人のエピソードである。
「自己責任」とは、こういうことだ。 状況判断を自分でやって、取るべき行動を自分で決める。 だが、津波に飲み込まれようとしているのに交通法規を遵守しようとする日本人には苦手なことかもしれない。 日本人は、個人よりも集団の規範に従い、皆と同じことをするのが最も安全な生き方だと教え込まれて(飼い馴らされて?)きたからだ。
放牧中のヒツジの群れのリーダーは、ヒツジより少し頭の良いヤギだという。 頭の悪いヒツジたちは常にヤギの後を追う。 だから、ヤギが誤まって川に落ちてもヒツジたちはヤギに従って川に飛び込む。 そして、皆溺れ死んでしまう。 中央アジア・キルギスの遊牧民が教えてくれた。
消防のオジサンが口にした「自己責任」は、実は、日本人にはとてつもなく重い命題なのだ。 3月11日の新聞を隅から隅まで読んでみたけれど、「自己責任」という単語をみつけることはできなかった。
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