2013年7月2日火曜日
同一性障害の政治的症候群
性同一性障害の知人が身近にいないので、彼らの日常の心理を直接知る機会はない。 自分自身で感じる性と世の中や戸籍が認めている自分の性が合わず、つねにアイデンティティに違和感がある人生。 着たくもなかった着ぐるみを脱ごうとしても、そこから抜け出せないもどかしさ。 簡単に口先で、同情するなどと言えない苦悩があると思う。
2013年6月24日朝、目を覚まして新聞を広げ、テレビのスイッチを入れたときの違和感は、性同一性障害者の感覚に似ていたのかもしれない。 そこは自分が住んでいる世界だが、そうではない。 日常生活の臭いも物音も見慣れた光景も同じ。 だが、この倒錯した感覚は何か。 前日は体調が悪くて、1日中ベッドに寝転び、「5万年前に人類に何が起きたか?」などという実生活から遠く離れたテーマの本を読んで、そのまま寝入ってしまった。 だが、それで頭がおかしくなったわけではない。
肉体と精神の奇妙なズレ。 その原因はすぐにわかった。 新聞とテレビが大々的に伝えているニュースのせいだった。
「自民全員当選 第1党」
「自民に勢い鮮明」
「自民満願『59』」
「自公 笑顔満開」
「全勝 歓声バンザイ」
(いずれも読売新聞から)
前日23日に行われた東京都議会選挙の結果だ。 国政与党の自民党と公明党が圧勝していた。
マスコミの事前予想通りではあるが、われわれ東京市民の皮膚感覚とは断じて違う。 自民党が圧倒的な第1党になったが、東京市民は絶対に自民党を大勝させようなどと思っていなかった。 この感覚のズレが同一性障害の症状として顕在化したのだ。 自民党が勝っていないのに、ニュースは「勝った」と繰り返し叫ぶ。 まるで「勝った」と思っていない人々の脳みそに、「勝った」を摺り込もうとするかのように。
だが、結果はそうではない。 党派別得票率を見れば、あまりに明白だ。
国政与党の得票率は、自民党36.03%、公明党14.10%、合計50.13%。 議席で過半数を大きく上回ったばかりでなく、得票率だけでも過半数に達した。 しかし、これを以って「自公勝利」とは言えない。 そんなことは、「勝った」と主張する自民党、公明党、新聞、テレビだって知っているはずだ。
この選挙の投票率は43.5%。 半分以上の56.5%は投票していない。 自公の得票率は、50.13%の43.5%、つまり、実際の支持率は21.8%でしかない。 自民党だけなら15.67%にすぎない。
そう、これが東京の実像だ。 既成政党を信頼できず、政治に興味と関心を失い棄権した56.5%が、巨大な第1党なのだ。
まさに、われわれの生活感覚。 こんな選挙で第1党になったからと言って「勝った、勝った」と大騒ぎしていたので、こちらの頭もおかしくなったのかと不安になってしまった。
次は、7月21日の参議院選挙かあ。
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