(カイロの「5月15日橋」の事件現場) |
だが、この事件で中東で今拡散しているテロを身近に感ぜざるをえなかった。 発生場所が馴染み深いところだったからだ。
カイロ中心部を南北に流れるナイル川。 その中州であるゲジラ島。 中州とは言っても大きな島で、外国人が多く住むコンドミニアムや大使館、それに、エジプトのサッカー・プレミアム・リーグの強豪アル・ザマレクが本拠地とするスタジアムもある。
テロ事件が起きたのは、ゲジラ島に渡る「5月15日橋」の上だった。 20年も前のことになってしまうが、この近くのザマレク地区に3年間住んでいた。
この橋は散歩コースだったし、カイロの他の地域に行くときは車で必ず渡った。 そばには「トーマス」というピザ屋があった。 店内の窯で焼く店で、日本の宅配ピザとは比べ物にならない味だった。 今でもあるのだろうか。 冬には、ゲジラ島から橋を渡ったあたりに、石焼き芋の屋台が出ていた。 種子島の安納芋そっくりのねっとりした舌触りだった。
世の中の出来事を身近に感じるということは、距離の近さだけではない。知り合いが関わっているとか、自分に馴染みの場所とか、人それぞれ様々な理由がある。 これまでだって、友人が飛行機事故で死んだり、インタビューした政治指導者が暗殺されたり、一緒に酒を飲んだ芸術家が逮捕された。 だが、そういう直接的関わりだけではない。 インターネットやメディアの発達で、世界がどんどん狭くなり、身近になっていく。
今回のカイロの事件にしても、発生からさしたる時間を経ずに日本で報じられた。 パソコンを開くと、現場がピンポイントでわかり、生々しい写真や動画を見ることができた。
カイロを離れて20年という時間はどこへ行ってしまったのか。 桜が散り始めた長閑な東京で暮らしながら、テロの不安が広がるカイロの埃っぽい騒音の道路で火薬の臭いを嗅いでいる。 これは、現実なのかバーチャルなのか。
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