オリンピックの東京招致なんか絶対に反対だったし、そもそも、あの傲慢な態度で人を見下す都知事の石原慎太郎には生理的不快感を覚えていた。 だから4月10日の都知事選挙では投票によって、自らの意見を表明すべきだったかもしれない。 が、花見酒を飲んでいるうちに選挙のことなど忘れてしまった。
友人の写真家Tは違っていた。 政治への不信感を表明するために投票に行ったのだ。
上のイラストは投票所での投票のやり方をサルにもわかるように説明したものだ。 ①受付で自宅に郵送されてきた投票所入場整理券を渡す②選挙人名簿で本人確認をする③投票用紙をもらう④投票記載台で用紙に自分の支持する候補者名を記入する⑤投票箱に用紙を入れる。
Tは自分の政治不信を、④を省き、③から⑤へ、つまり投票用紙を受け取ると投票箱へ直接向かい、白紙のまま投函するという行動で表明した。
イラストに描かれている投票立会人・投票管理者の目に、Tの行動はかなり突飛に写ったようだ。 彼らの一人は思わずTに声をかけた。
「あっ、お客さん」
後日話をきいて「お客さん」には笑わせられた。 有権者を「お客さん」と呼ぶ神経は訳がわからないが、かと言って、どう呼べばいいんだろう。 ヒマなときに選管に電話してきいてみよう。
選挙では石原が当選してしまった。 だが、「勝った」というのはウソだ。
石原は立候補者の中では最高の2,615,120票を得票し、日本の新聞は得票率43.4%で圧倒的強さを発揮したと報じたが、この得票率の数字は明らかな間違いだ。
43.4%というのは、投票者数6,072、604に占める割合で、東京の全有権者数10,505,848の中では24.9%でしかない。 これが石原の本当の得票率なのだ。
この選挙の投票率は57.8%。 したがって棄権した有権者は42.2%、4,433,244票。 石原の獲得数を断然引き離し凌駕している。
真の勝者は<白票>なのだ。
Tのように積極的に白票を投じるために投票所に行った有権者の数はわからない。 ちなみに、都知事選立候補者11人の全得票数は6,025,339で、投票者数より47,265少ない。 おそらく、ほとんどは書き間違えや判読不能の無効票であろう。 Tの貴重な反骨の1票も、残念ながら、その中に紛れ込んでしまった。
そう思うと、うんざりする。 いいかげんに、偽善と欺瞞の選挙制度は変えようではないか。 白票に代表される積極的棄権がカウントされる制度を作り上げれば、政治不信を政治家に明確に突きつけることができる。 そうなれば、多くの有権者がわくわくして白票を投じ、投票率が大幅に上がるにちがいない。
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