2011年5月1日日曜日

Canonは大砲じゃない





日本を代表するカメラメーカーCanonの社名は、1935年、世界で通用するブランド名として採用された。 キリスト教の「聖典」「規範」を意味し、精密工業にふさわしいというのが理由とされる。


 英語で1字違いのスペルcannon(画像下)は、発音は同じだが、意味がまったく異なる。 戦場で昔から使われてきた代表的な大砲のことだ。


 近ごろ、野生動物の撮影のためと称して、兵士のように迷彩服で身を固め、長大な望遠レンズを担いでいるマニアックな人々を見ると、Canonは、社名をCannonに変更してもいいのではないかと思ってしまう。 なぜなら、あの望遠レンズは、命を脅かす武器にもなるからだ。 


 川崎市・平間のベテラン写真家K氏が語るカメラ・フリークたちの生態はおぞましい限りだ。


 この冬、東京・大田区の多摩川河川敷にトラフズク(画像上)が棲みつき、カメラを担いだ人間たちが群がった。 彼らは、夜行性のトラフズクが樹上で休んでいる昼間、情容赦なく望遠レンズ=大砲の集中砲火を浴びせた。 K氏によると、動物へのいたわりの気持ちがかけらもない連中の存在は、今に始まったことではない。


 約10年前までは、多摩川の川崎側でトラフズクを見ることができたという。 当時も、その存在が知れ渡り、カメラ人間たちが群がった。 昼間は眼を閉じて休んでいるトラフズクを長い棒でつついて起こして、眼を開けた写真を撮ろうとするヤツまでいたと、K氏は憤慨する。


 このころは、コミミズク (画像中)も多摩川に棲んでいた。 コミミズクは昼間も行動するので様々な絵柄の写真を撮れる。 狙い目は、河川敷に巣食う野ネズミを急襲する瞬間だ。 だが、水辺ぎりぎりまでゴルフ場の芝が敷き詰められた河川敷の餌場は限られている。 ところが、狼藉者たちは、ずかずかと餌場に入り、ネズミの巣穴の上に立ってカメラを構える。 これではコミミズクがネズミを捉えることはできない。


 K氏は「鳥の気持ちを少しは考えろ」とたしなめた。 すると、その相手は「オレは鳥じゃないからわからん」とうそぶいた。 それでもK氏は、群がる無法者たちに丁寧に説明して、餌場の外で撮影するというルールだけは守るようにさせた。
 それからしばらくして、その餌場は多摩川の大水で冠水した。 以来、川崎側ではトラフズクもコミミズクもみかけなくなったという。


 ちょうど、聳え立つCanon本社を眺めることができるあたりの出来事だ。 Canonが武器商人でないなら、カメラを野生動物迫害の兵器にさせない努力をすることが企業責任というものだろう。




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