大雪の東京。 20センチ余りだが大雪だ、東京では。
歩道は人ひとり歩ける程度の幅だけ踏まれている。 東京の雪はぐしょぐしょに水っぽくて、北国の乾いた雪とは違う。 踏みあとを外れると、水に足を突っ込んだのと同じで、靴に水がびっしょりと滲みこむ。
歩道で、歩いている人同士がすれ違うときは、どちらかが踏みあとを譲らなければならない。 まさか、前から来る人と意地を張り合って相手に「どけ」と言うわけにはいかない。 だから、ぐしょぐしょの雪に足を踏み入れて、道を譲る。 まあ、紳士としては当然で自慢するほどのことではない。
この2日間、雪の歩道でずっと譲ってきた。 それはどうでもいい。 気付いたことは、譲られて通りすぎていった人たち、子どもの手を引く若い母親、サラリーマン風の中年男、酔狂に歩いているだけとおぼしき老人・・・、誰一人として、「すみません」とか「ありがとう」とか、軽く「どうも」とか、あいさつをしなかったことだ。
それに、思い起こしてみると、こちらが譲っただけで、先に譲ってくれた人はまったくいなかった。 冷たい雪の日に知ったのは、冷え切った人の心だったのか。
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