われわれ山の手生まれの目で下町っ子を見ると、まず言葉遣いで落語の世界から飛び出してきたように思えてしまう。
例えば、東北や九州の人と会話すれば、相手を地理的に離れたところから来たと思う。 だが、下町の人は、まるでタイムマシンで時空を越えて、江戸時代の世界からやって来たかのようなのだ。 つまり、距離感とは違う遠さがあるのだ。
だから、下町に行くというのは、東京を西から東へ地下鉄で都心を横切って単に移動するだけではなく、見知らぬ土地に足を踏み入れるような、ある種の旅をする感覚を抱かせる。
「日本橋エリア利き歩き」という催しがあった。 日本橋から人形町あたりにかけての飲み屋が秋の土曜日の午後開放され、各地の日本酒利き酒の会場となった。 前払い2500円で飲みたいだけ利き酒をできる。
これは、ちょっとした”下町旅行”ではないか。 行ってみると、きっとこれが東京に遊びに来た”お上りさん”という気分。 同じ東京の光景なのだが、飲み屋のたたずまいはどこか違う。 なんとなく昔懐かしい、こういう店で腰を据えて飲みたいという気持ちにさせられる。
通りには、われわれと同じような”東京お上りさん”が大勢うろうろしている。 店によっては、酒を口にするまで、かなりの行列を待たねばならない。 とはいえ、長くて、せいぜい10分くらいか。
案内によれば、全部で37店。 酒は326種。 午後2時から6時30分までの4時間半で全部味わうのは不可能だ。 大吟醸だの、なんとか搾りといった値の張りそうな銘柄も並ぶ。
案内の注意書きには、「全蔵制覇は飲酒量的に危険ですので、おやめ下さい」とある。 そりゃ、そうだ。
だが焦ることはない。 飲み放題というから酒はたっぷりあるのだ。
店に入って、受付で貰ったお猪口に好みの酒を注いでもらう。 注いでくれるのは蔵元から派遣された味をよく知る玄人たちで、質問すれば色々教えてくれる。
われわれは4店ほど回ったか。 1か所で3種類飲んだとして、12種類の酒を楽しんだ。 それぞれ、お猪口で1,2杯といったところか。
晴れた秋空の下、次の店を目指して、ほろ酔い加減で街を歩く。 ちょっと飲んでは、ちょっと歩く。 だから、ずっと深くは酔わない。 これも悪くはない。 こんな飲み方は初めての体験だろう。
これを機に、人形町あたりで、また飲んでみようか。 次は、旅行者、観光客ではなく、東京人として。
とはいえ、山の手の連中の気取ったしゃべり方が気に食わねえ、って啖呵を切るような本物の江戸っ子には会えなかった。
そんな江戸っ子はもう絶滅しちまったから、気軽に飲めたのかな?
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