きのうの新聞(yesterday's paper)に、全国で今年4月以来の2か月で、女性やこどもに声をかけた168人が警察から警告を受けたという記事が出ていた(6月25日付け読売新聞夕刊)。
おかしな人間による犯罪を未然防止しようとする警察の活動を伝える無批判なサツダネ記事の典型ではある。だが、ちょっと寂しい気分にさせられる内容だった。
盛り場やビーチで若者たちがナンパする光景は、石原慎太郎が反抗的新世代の代表という幻想が共有されていた時代(つまり化石時代)から珍しくはない。近所のこどもに、おじさんやおばさんが「大きくなったね」と声をかけるのも、ごく当たり前の慣わしではなかったか。
だが、記事によれば、こういう行為は、やがて最悪の事態、殺人に発展する可能性のある「犯罪の前兆」として、警察の注意を引くようになったらしい。
この記事で紹介されている具体例―「埼玉県警は4月22日、上尾市内で小学生の女児たちに繰り返し、『かわいいね』『成長したね』と声をかけていた40歳代の男を割り出し、警告した」
この男には、きっと不審者じみた行動と雰囲気があったのだろう。だが、「かわいいね」とか「成長したね」などという言葉を近所のこどもにかけるのは、ごく普通のことではないか。
逆に、「声かけ運動」なんて看板を、どこかで見たような気がする。
職場で恋愛をすればセクハラになり、満員電車の中で背中が痒くなってモゾモゾ動けば痴漢にされる時代。
膨大な「してはいけないリスト」を頭に入れておかなければ、もはや、この国を歩くことはできない。