2010年4月2日金曜日

”幸せって 何だっけ 何だっけ”



 早朝のスーパーマーケット。 男の客が多いことに、近ごろ気付いた。 むしろ、女より男の方が多いかもしれない。 朝っぱらから酔っ払って、缶チュウハイを買いにきた近所の公園居住のホームレスがうろついている。 その横をスーツ姿の若い男たちがすり抜け、298円の弁当をさっと掴んでレジに向かう。 そして隠居生活に入ったとおぼしき高年齢者たち。

 どいつもこいつも、ろくな食生活をしていない。 豊かさの中の貧困。 スーパー店内で、なかでも気になるのは、高年齢者たちのカゴの内容だ。 いちいち覗いているわけではなく、レジに並べば他人の食生活があからさまに見えてしまう。

 彼らが買う食料は、出来合いの惣菜、レトルト食品、インスタントの麺類が主体。 納豆、豆腐、ハム、ソーセージ、サバ缶など、火を通さずに食える品がそれにう加わる。 コーヒーや日本茶もペットボトルで買い込む。

 こうした品目から想像するかぎり、彼らは自宅で料理をしない。 ここで言う料理とは、野菜、魚、肉などの食材を自分で調理して食卓に並べて食べるもので、どこかの工場で製造された袋の中身を取り出し、電子レンジで温めて口に放り込む行為は、市場経済システムの最終処理段階でしかない。


 朝の男たちに気付いて、夕方のスーパーも観察してみた。 かつて買い物は主婦の仕事だった。 だから、男の姿が多いことに今さらながら驚いた。 もちろん、カゴの中の個人生活もじっくり観察した。 朝とそれほどの違いはないが、缶ビール(主として、発泡酒か第3のビール)、紙パック入りの日本酒、焼酎が加わる。


 そういえば、朝のジョギングのあとコーヒーを飲むために立ち寄るファミリーレストランで、老人たちが一人もくもくと朝定食を口にしている姿を何度も見たことを思い出した。


 おそらく、彼らは妻に先立たれた、妻がいたとしても夫が介護をしている、などと想像する。


 とくに、一人身だとすれば、食卓風景の寂しさは思い描きたくもない。


 料理をしない、できない男たちが長生きして、何を楽しみに生活しているのだろう?


  ♪ 幸せって 何だっけ 何だっけ ♪
  ♪ 幸せって 何だっけ 何だっけ ♪


 明石家さんまがノーテンキに、なおかつ、しつこく繰り返して歌うキッコーマンのCMソングは、哀しく老いた男たちをいたぶる残虐行為にもきこえる。

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