コンビニとか銀行の監視カメラに写っているマスクを付けた人物といえば、強盗とか詐欺師のイメージだろう。 犯罪者たちは悪事をするとき顔をみられたくないからマスクをする。
だが、世間から尊敬され非常にまともな職業とされる医師たちも人前でマスクをしている。 ニセ医師だとか麻薬を横流ししている悪徳医師が人相を隠している可能性も否定はできないが、そんなのは例外だろう。 むしろ、地元住民との信頼できる人間関係構築が、いわば医療行為の一部にもなると思われる町のクリニックで、医師が顔を見せないのはなぜか。 「顔のない医師」は不気味でもある。
もちろん、マスクをしていない医師もいるが、近ごろは大多数の町医者がマスク着用のまま患者に対応しているという印象だ。
マスク着用の理由は容易に想像がつく。 感染症の患者も多く訪れる場所で、最も感染の危険に晒されているのは他ならぬ医師だ。 だからマスク医師は十分納得できるのだ。
ただ、それにしても、医師といえども客商売なのだから、ちらっと顔をみせたっていいじゃないか。 彼らは、対人恐怖症なのか、口裂け女(医)なのか、あるいは、単にマスクを外すのを面倒臭がる横着者なのか。
いや、待てよ。 もしかしたらマスクの常時着用は「医師就業規則」みたいなもので決められているのかもしれない。
これは確認を取る必要がある。 それで日本医師会に電話してみた。 すると、「くだらんことで電話するな」という横柄な態度ではなく、非常に丁寧に説明してくれた。
その説明によると、新型インフルエンザの流行時などには、飛沫感染防止のために、国からマスク着用の通知があるが、マスク常時着用は規則ではない。
面白い話もきかせてくれた。 小さな子どもはマスクをした医師を見ただけで怖がって泣き出してしまうのでマスクを外すという。
日本医師会は知らないのかもしれないが、おとなだってマスクをした医師は薄気味悪く感じるのだ。 まさか泣き出しはしないが。
近所を歩いていて、行きつけのクリニックの医師とすれ違ったことが、あるのかないのか知らない。 大事な自分の健康を預けている相手の顔を知らないというのは、社会のあり方からしてもいびつではないか。
日本医師会に質問してみた。「先生、顔を見せてくれませんか」と訊くのは失礼ではないかと。
嬉しいことに、答えは「問題ない」。
メタボのオジサン、更年期のオバサン、妊娠中のヤンママ、銃撃を生き残ったヤーサンの皆さん、マスクの医師に出会ったら、「顔を見せてください」と言ってみよう。
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