公園の広場を腕力の強いガキ大将グループがいつも占領して野球をやっている。 ほかの子どもたちには広場を絶対に譲らず、自分たちが土地の所有者みたいな顔をしている。 ガキ大将は言う。 「オレたちが広場を隣町の連中から守っているから、この公園では騒ぎが起きないんだ」。
トルコ軍は、建国の父アタチュルクが基礎を作った西欧型近代国家の守護者を自任し、歴史上何回かクーデターを起こして政治に直接介入した。
タイの伝統的特権階級は、成り上がりの企業家・政治家タクシンの政権を倒し、国外へ追い出した。
82歳にもなってエジプト大統領ムバラクは、まだ引退せず、来年の大統領選挙に出馬し6期目を目指す。 この独裁者への最大の脅威である政権批判集団「ムスリム同胞団」の政治活動を抑え続けているから、当選に不安はまったくない。
イランのイスラム教シーア派聖職者たちは、革命を実現したアヤトラ・ホメイニというカリスマ指導者亡きあと、知識と指導力にかなり疑問のあるアリ・ハメネイを次の最高指導者に選出し、イスラム国家体制の名目を保った。 これによって、聖職者たちは単なる政治家に成り下がった。
北朝鮮の金正日は、飢餓に苦しむ国民に目もくれず、父親から息子へと3代にわたる王朝を築きつつある。
ビルマの軍事政権は、1990年の総選挙で圧勝したアウン・サン・スー・チーが指導する政党・国民民主同盟(NLD)の政権掌握を阻み、スー・チーに長い軟禁生活を強いた。
いずれも、広場を独占するガキ大将グループと同じ論理で権力を手放そうとしない。 重要なのは既得権なのだ。 既成事実を作れば、理屈などどうにでもなる。
美しすぎる囚人、スー・チーが11月13日、自宅軟禁から解放された。 これで、軍事独裁政権が支配するビルマの政治状況が好転するわけではない。 独裁者たちが、スー・チーをこの時点で解放した方が、既得権維持には都合がいいと判断しただけのことだ。
日本外務省の役人たちの「外交」なるものは、基本的には、権力者たちとの良好な関係維持が最重要課題のひとつになっている。 かつてトルコに駐在した女の大使は、日本の外務大臣が訪問する前に、欧州各国が批判しているトルコの人権問題を大臣が絶対話題にしないよう根回しをしたそうだ。
ビルマに関しても、軍事独裁政権とのパイプを維持することが大切だとして、真正面からの非難は避けている。 政権と妥協しないスー・チーについては、頑固すぎるという評価だ。 ガキ大将に殴られても蹴られても歯を食いしばって涙をこらえる子どもに対して、「謝れば楽になるよ」というのも同然だ。
日本外務省が期待しているのは、ガキ大将の仲間で、あまり乱暴を働かないヤツによる権力奪取と思われる。 国際社会の批判も多少和らぐし、従来通りに政権とのパイプも続くというわけだ。だが、これは、つまり、クーデターだ。 物事の本質に、なんら変化はない。
ガキ大将グループを一掃するには、ちょっと離れた盛り場に巣食う本物の暴力団に手を出させるという方法もある。 だが、このやり方がうまくいかないことは、ベトナムでも、イラクでも、アフガニスタンでも立証されている。
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