2017年9月14日木曜日

蘇炳添を忘れるな


 9月9日に、桐生祥秀が陸上100mで日本人として初めて9秒台の記録を出した。 9.98秒。 日本人には嬉しいニュースだった。 近ごろのスポーツ選手はイケメン揃いになった気がする。 だが、桐生クンは普通の田舎臭い若者面。 親しみの持てる新たなスターの誕生だ。 東京オリンピックのころ活躍した飯島英雄も田舎っぺ面だったっけ。 二人ともイボイノシシを思い起こす顔つきだ。

 桐生クンや他の若い日本人スプリンターへの期待はふくらむが、日本人よりも先に「黄色人種」として初めて9秒台を出した中国の蘇炳添(スービンティエン)とのライバル対決も楽しみだ。

 中国の経済発展や中国人の国際的活躍に嫉妬心を抱きがちな日本人には受けないニュースのせいか、日本のマスコミは蘇炳添の活躍をあまり報じない。 とにかくアフリカ系の選手を除けば、おそらく世界一だろう。 2年前2015年5月に日本人に先駆けて9.99秒を記録、その年の北京世界陸上の100mで決勝に進出し、アジア人(生まれ育ちがアジアのnative)で初めてのファイナリストになった。 さらに今年の8月のロンドン世界陸上でも決勝進出を果たし8位に入賞した。

 日本のメディアは引退するウサイン・ボルトの最後の姿ばかりに注目していたが、あの決勝レースで蘇炳添はボルツに果敢に挑んでいたのだ。 

 蘇炳添は広東省中山市出身の28歳。 からだは小さい。 172センチ、65キロ。 大型スプリンターが世界の主流になる中で、桐生(175センチ)より小さい。 このからだで、今年5月には、追い風2.4mで参考記録ながら9.92秒を叩きだした。

 100mを9秒台で走った人間は桐生が126番目だそうだ。 世界に目を向ければ、ニュースでも何でもない。 保守反動政権下で今、日本ナショナリズムがむやみに煽られている。100m9秒台の騒ぎも、そんな一コマであろう。 純粋にスポーツを楽しみたいなら、 蘇炳添は絶対に面白い存在だ。 日本ではスポーツ・ニュースも次第に政治化している。

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