2013年11月13日水曜日

深遠なるクルミ割り


 暇つぶしでネットをあちこち覗いていて、山梨県甲府市郊外、昇仙峡に近い辺りのリゾート・マンションが手ごろな価格で売りに出ているのが目に留まった。 それで、紅葉見物を兼ねて、クルマで現地に行ってみた。 結局、色々と気になることがあって、価格は安かったが購入は見送った。 もともと真剣に考えていたわけではなかったので、紅葉を楽しみながら帰途についた。

 途中、地元農家の婆さんが街道沿いで自作の野菜を売っていたのでクルマを停めた。 旨そうな太ネギ4本、大きな柿の実2個、キウィ2個、それに網袋に入ったクルミ500グラム程度を買った。 全部で800円。 安いものだ。

 うちに持って帰って、どうやって食べようかと戸惑ったのはクルミだった。 売ってくれた婆さんは、そのままナマで食えばいいと言ったが、硬い殻を割る方法がわからない。 日本に自生するオニクルミというヤツで殻は簡単には割れない。 試しに金槌で叩いたら、こなごなになって殻も実も飛び散ってしまった。 

 とりあえず、クルミの殻を割る「クルミ割り」という道具は、「クルミ割り人形」などというものがあるくらいだから、面白い工夫を凝らしたものがあるに違いないと思って、近所の百円ショップに行く前にネットで検索してみた。

 すると色々、安いのから高いのまで出てきた。 ところが、どれを選ぼうかとネット商品の「コメント」を見て困った。 あの硬い殻をうまく割れる「クルミ割り」がそう簡単にはみつからないらしいのだ。 たかがクルミの殻を割る単純な道具の奥の深さが、そこには滲み出ていた。 

 「クルミ割り」へのコメントのいくつかを紹介しよう。 

 「クルミを割ろうとしたらクルミを入れる部分(鋳物製?)が割れてしまいました。それも、最初の1個目でです。信じられますか。笑い話にもならない。」

 「道具よりクルミのほうが固いので、先に道具が割れます!炒った銀杏なら割れそうです。」

 「胡桃が粉々になる位何回も潰さないと実が取れませんでした。」

 「20個位使用したら、ひび割れしてもう使えません。購入して失敗しました。買ったクルミがまだ500個以上あり、違うタイプの物を買うことも検討しましたが、どうせ同じ様な結果だろうなと思うとクルミと、いっしょに捨てちゃって忘れちゃおうと思っています。」

 「これは久々に失敗した商品でした・・・。クルミのサイズと全然違う為、ガチっとクルミは挟めないし、全然割れないし・・・。完全なる設計ミスだと思います・・・値段が高いのに大失敗でした・・・。」

 「クルミの殻を割るのに購入したのですが、殻と一緒に実までつぶれてしまいます。器具としては、もっと工夫が必要です。 クルミ割りとして発売しているのは如何なものか」

 英語の”foolproof”。 「バカでも大丈夫」。 使い方を間違えようのない単純な道具のことだ。 例えば金槌。 何かを叩くしか使い道はない。 クルミ割りも実に単純な”機械”。 クルミを挟んでギュッと手で力強く握って割るだけだ。 ところが、こんな”バカの道具”がうまくいかない、というところが面白い。

 そこで、ネットには、「クルミの簡単な割り方」という色々な知恵が紹介されている。 フライパンで炒めたり、電子レンジで加熱したり・・・。 だが内容を熟読してみると、どうやら様々なアイディアのどれも十分満足できるものではないらしい。 You tube の動画にいたっては、「簡単」ではなく「困難」を紹介しているかのようだった。 結局、クルミ割りのうまい方法はわからず仕舞い。

 リゾート・マンションを購入するはずだったのに、クルミ割りの深遠さを学んで、秋の夜は更けていった。

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