2015年1月21日水曜日

「イスラム国」報道の舞台裏


 イスラム過激組織「イスラム国」が、日本人男性2人を人質に、日本政府に対し2億ドル、日本円で約236億円という、とてつもない額の身代金を要求し、日本の政府もメディアもあたふたしている。(2015年1月20日) 

 イスラム世界の専門家の数は日本では限られている。 なおかつ、接触が困難な過激組織について語るとなると一握りの人々しかいない。 それでも、メディアはあらん限りの情報をかき集め、報道しようとする。 こうして、普段は日本社会でほとんど関心を持たれない分野の研究者たちが、大騒ぎの渦に巻き込まれる。

 その一人がブログで、メディアに対する腹立たしさをぶつけている。 若い研究者として、ここ数年メディアへの露出度が高い東京大学准教授・池内恵だ。 かなり生意気で横柄な表現だ。 だが、そこから、彼の高ぶる感情が伝わってきて、メディアの現状を知る上で興味深い。 

 保存資料として、転載した。

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「イスラーム国」による日本人人質殺害予告について:メディアの皆様へ

2015/01/20 20:55
本日、シリアの「イスラーム国」による日本人人質殺害予告に関して、多くのお問い合わせを頂いていますが、国外での学会発表から帰国した翌日でもあり、研究や授業や大学事務で日程が完全に詰まっていることから、多くの場合はお返事もできていません。

本日は研究室で、授業の準備や締めくくり、膨大な文部事務作業、そして次の学術書のための最終段階の打ち合わせ等の重要日程をこなしており、その間にかかってきたメディアへの対応でも、かなりこれらの重要な用務が阻害されました。

これらの現在行っている研究作業は、現在だけでなく次に起こってくる事象について、適切で根拠のある判断を下すために不可欠なものです。ですので、仕事場に電話をかけ、「答えるのが当然」という態度で取材を行う記者に対しては、単に答えないだけではなく、必要な対抗措置を講じます。私自身と、私の文章を必要とする読者の利益を損ねているからです。

「イスラーム国」による人質殺害要求の手法やその背後の論理、意図した目的、結果として達成される可能性がある目的等については、既に発売されている(奥付の日付は1月20日)『イスラーム国の衝撃』で詳細に分析してあります。

私が電話やメールで逐一回答しなくても、この本からの引用であることを明記・発言して引用するのであれば、適法な引用です。「無断」で引用してもいいのですが「明示せず」に引用すれば盗用です。

このことすらわからないメディア産業従事者やコメンテーターが存在していることは残念ですが、盗用されるならまだましで、完全に間違ったことを言っている人が多く出てきますので、社会教育はしばしば徒労に感じます。

そもそも「イスラーム国」がなぜ台頭したのか、何を目的に、どのような理念に基づいているのかは、『イスラーム国の衝撃』の全体で取り上げています。

下記に今回の人質殺害予告映像と、それに対する日本の反応の問題に、直接関係する部分を幾つか挙げておきます。
(以下省略)
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