2014年7月14日月曜日
滋賀県知事選の伝えられ方
7月13日に行われた滋賀県知事選挙で、自民・公明両党が推薦する候補が破れた。 翌14日、自民党・安倍政権を全面的に支持する右翼紙、読売新聞と産経新聞が、なんとも苦し気に報じているのが面白い。
「知事選は本来、候補者の資質や県政の問題を問うものだ。石破幹事長が『候補者、県政に直接、影響があること以外で影響が出ている』と指摘したような展開になったのは残念である」。
これは負けた自民党候補の談話ではない。 14日付け読売の社説だ。 自民党と一体になった読売の口惜しさが滲み出ているではないか。
ここで言っているのは、環境相・石原伸晃が福島第1原発事故に伴う汚染土の中間貯蔵施設建設に関し、候補地の住民説得は「最後は金目でしょ」と記者たちに語った暴言問題、東京都議会と衆議院総務委員会での自民党議員によるセクハラ野次など、自民党議員の品格の欠如が暴露されてしまった出来事が選挙結果を決めてしまったということだ。 つまり、「あんなドジさせなければ…」という、なんとも立派な”社説”である。
さらに、こう主張する。 「疑問なのは、(当選した)三日月氏が、嘉田知事(任期満了で退職する現知事)と同様、段階的に原子力発電から脱却する『卒原発』を唱えたことだ。 原発政策は、政府が大局的観点から判断すべきものだ。 原発の再稼働などには、知事の法的権限は及ばない」。
これは凄い! 原発に関して法的権限のない者は余計な口出しをするな、と叫んでいるのだ。 われわれ一般市民にも黙っていろと命じているも同然ではないか。
同様に、集団的自衛権を限定的に容認する新政府見解の閣議決定を三日月候補が批判したことも受け入れられないようだ。 「政権批判の一環で新見解に反対し、『場外戦』に持ち込んだと言える」というのだ。
新政府見解への反発で安倍政権への支持率が下がったタイミングで滋賀県知事選は行われ、それが自民・公明側の敗因のひとつと指摘されている。 だが、それはプロレスの場外乱闘と同じで、正々堂々の勝負だったら負けなかったと強がっている。 なんとも、わけのわからない”if”だ。
産経新聞の「主張」は、自公連立政権の性格を非常に正直に表現している。 負けた自公推薦の候補を「自民党の候補」と呼び、公明党を無視している。 見出しも「知事選自民敗北」だ。 公明党は連立のオマケみたいな存在なのだ。
産経が言っていることは、読売と似たようなもの。 敗因は、「出遅れによる知名度不足に加え、選挙の直前に東京都議会でセクハラやじ問題が生じて、自民党への逆風が強まったこと」。 負けたのは、戦術とタイミングの問題で本質的なことではない、自民党は浮足立つことはないと励ましている。
集団的自衛権に関しても楽観的だ。 「集団的自衛権の行使容認を決めたことの是非が、直接、知事選で問われたとは考えにくい。 だが、国民の十分な理解をまだ得られていないことは否定できない」。
一方、原発については、「『卒原発』など再稼働に極めて慎重な姿勢を打ち出したのは、嘉田氏(現知事)の支援を受ける上でやむを得ない面もあったのだろう」と、希望的観測にしがみついていた。 こういうのを”主張”というのか、疑問ではあるが。
なお、朝日新聞は、従来からの社論に沿った選挙結果だったせいか、慌てず冷静に報道していた。 別に褒めているわけではない。 この日の紙面は、読売と産経の方がはるかに面白かった。
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