2009年3月14日土曜日

アフガニスタン


 3月14日付け読売新聞朝刊の国際面に、アフガニスタンに関する記事が掲載されていた。首都カブールからの酒井圭吾記者の報告によると、「テロとの戦い」の最前線アフガニスタンでは警察力強化が急務だが、警察には汚職や麻薬汚染が広がっているという。
 この記事が引用している数字では、全警察官の18%、南部に限れば38%が麻薬を使っているとしている。この数字を見て、「えっ、ウソだろ」と思った。実体験からすると、多すぎるのではなく、少なすぎると感じたからだ。

 このブログのタイトル「The Yesterday's Paper」のせいか、また昔話になってしまう。

 1979年、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻して、抵抗するアフガン人との大規模な戦争になった。翌80年、戦争見物でこの国に潜り込んで、東部ジャララバードの通りを歩いているときのことだった。

 後ろから尾行している男の存在に気付いた。20mくらいの間隔を置いて、自分を隠す様子もなくついてくる。わずらわしくなったので、なぜ尾行するのかと 声をかけた。男は片言の英語で、自分は警察官で、見慣れない外国人が歩いているので監視していると答えた。そこで、怪しい者ではない、散歩しているだけだ から心配するな、と説明した。すると、「それなら街を案内してやる」と言うので、2人して、ジャララバードの街を散歩することになった。

 われわれは歩きながら色々な話をしているうちに、まあまあの仲良しになっていた。それで、彼は別れるとき、チャイハネに招待してくれた。チャイハネと は、そのまま英訳すれば「tea house」、日本語なら喫茶店、いや建物の風情からすれば、日本の時代劇で街道筋に必ずある茶店がふさわしい。

 そこで彼がふるまってくれたのは、お茶だけではなかった。ハシシも注文した。2人で吸引し、気持ち良くなって、最後は、アフガン式に熱く友情の抱擁をし、両頬にキスをして再会を誓った。

 それから10年後にアフガニスタンを再訪して、南部カンダハルでのことだった。道端で、政府の役人、兵士、警察官、バザールの商人など7,8人と輪に なって世間話をしていた。そのとき、誰かがマリファナたばこを取り出して火を点けた。やがて、いつの間にか全員での回しのみになっていた。

 アフガニスタンでは、ハシシ、マリファナ、生アヘンの吸引は、日本人の飲酒と同じくらい普通のことだ。だから、これらを「麻薬」と呼ぶなら、警察官でもほとんどが吸引経験があると思う。だから、新聞で報じられた数字を信じがたいと感じたのだ。

 彼らの生活感覚からすれば、こういったものは麻薬、英語で「drug」,「narcotic」に相当するものかどうか、判断が難しいと思う。伝統的な病気療法としても使われてきたからだ。

 ただ、以前のアフガニスタンは、1次産品、つまりケシから抽出した生アヘンの輸出国にすぎなかった。だが、最近は、原材料輸出国が製品輸出国へと発展したのと同様、生アヘンをコカインに精製して密輸するようになったと聞く。コカインの毒性は生アヘンの比ではない。

 かつてのアフガニスタンにコカインはなかった。日本の新聞は、アフガン警察官が使う麻薬の種類については報じていない。普通の日本人の感覚からすれば、 マリファナもコカインも麻薬は麻薬で同じようなものだろう。だが、タバコや酒よりも害悪性が低いとされるマリファナが合法化されている国があることでわか るように、日本語で「麻薬」と言っても種類は様々だ。

 アフガン警察官の麻薬使用率が、毒性の高いコカインなどを含む数字だとしたら怖い。世界一のアヘン生産国アフガニスタンの悪魔的発展と変化を示唆するか らだ。そうではなく、のどかな時代のハシシやマリファナだけの使用率なら、アフガニスタンの未来は、むしろ明るいのではないかと思う。

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