2013年10月28日月曜日

JR北海道もかなわない!


 JR北海道の度重なる事故、不祥事のニュースによれば、JR北海道の鉄道レール幅は1067mmに決まっていて、19mm以上の広がりがあった場合は15日以内に補修することになっていた。 ところが、この基準の2倍近い37mmになっていても放置されていたそうだ。

 このニュースが流れて、すぐに連想したのはエジプトの光景だった。 1990年代、首都カイロから中部の都市アシュートへ鉄道で行った。 当時、イスラム過激組織が散発的なテロ活動をしていた。 テロとはいっても子どものイタズラに毛がはえた程度で、鉄道線路沿いのサトウキビ畑から列車に向かって発砲するくらいだった。 治安当局がとった手っ取り早いテロ対策は、線路沿いのサトウキビを刈り取ってしまうことだった。 そうすれば、”テロリスト”が畑に隠れて発砲できないというわけだ。

 なんとなく長閑なテロ騒ぎではあったが、無論、背景には様々な社会的不満があった。 そんな情況の一端を見てみたくて列車に乗った。 広々とした特等席でナイル川と平行する田園風景を眺めながらの特急列車の旅は、なかなか快適だった。

 だが、アシュート駅で降りて、列車が去ったあと、ホームから何気なく線路に目を向けて驚いた。 2本のレールは、まるで2匹の長大なヘビが胴体をくねくねとうねらせているようだった。 鉄のレールが摂氏40度の暑さで蕩けてしまった棒飴のようにも見えた。 2本の真っ直ぐな平行線という線路のイメージが根底から覆された。 

 よくぞ脱線しないでレールの上を走ってきたものだ。 しかも快適な乗り心地で。 当時は、線路などというものは、かなり大雑把で、幅が多少狂っていても気にしなくていいものなんだと思い込んでしまった。

 しかし、これはとんでもない間違いだった。 エジプトでは大きな列車事故が頻繁におきているのだ。2002年には360人が死亡するという列車火災が起きた。 しかも、カイロとアシュート間300kmを結ぶ鉄道は、とくに危険なようだ。

 昨年11月には、 アシュート近くの踏切で遠足の幼稚園児などが乗ったバスが列車と衝突し、51人が死亡した。 この事故は、JR北海道が優等生にみえてしまうような原因で起きた。 遮断機を操作する係員が居眠りをしていて、遮断機を下ろさなかったためバスが突っ込んだのだ。

 そして、今年1月には、ついに、あのカイロ―アシュート間で脱線事故が起き、乗っていたエジプト軍兵士など19人が死亡、109人が負傷した。 やはり、レールは蛇行していてはいけないのだ。

 エジプトの鉄道は、迷走するエジプトの政治のようだ。 「アラブの春」の盛り上がりで、世界が賞賛する民主革命に成功したのに、国内の政治対立が続き、民主主義という列車がレールにうまく載らない。 乗り心地がいいのに、いつ脱線するかわからない特急列車。 これは、まさにエジプトの現実ではないか。

2013年10月26日土曜日

近くて遠い

10月26日、鵜の木の殺人事件現場。群がる記者たち。
2013年10月25日の昼近く、東京都大田区鵜の木の東急多摩川線鵜の木駅近くのアパートで、若い女の絞殺死体がみつかった。 午後3時すぎ、鵜の木上空あたりをヘリコプターがけたたましい騒音を撒き散らしながら何機も旋回を始めた。 現場から800mほどの我が家の周辺では、近所の人たちが、何事が起きたのかと空を見上げていた。 だが、その時間には殺人事件がテレビのニュースで流れていなかったので、住人たちは首をかしげるばかりだった。

 それから2時間ほどたって、我が家から4kmほど離れた川崎市・二子新地に住む友人から携帯にメールが来た。 「鵜の木のアパートで女が殺されたそうだ」。 きっとテレビが伝えたのだろう。 そうか、さっきのヘリ騒音はテレビか新聞の取材だったのか、と納得。 早速、もっと詳しい様子を知りたいと思って、現場まで400mほどのところにある行きつけの居酒屋のマスターに携帯メールを送った。 だが、彼はまだ事件を知らなかった。 逆に、教えてくれてありがとうと返信メールが来た。

 ふと、不思議だなあ、と思った。 情報源に近いからといって、情報が早く(速く)伝わるわけじゃないんだなと。 現場から4km離れている友人の方が400mしか離れていない友人より先に情報を知ることができたのだ。 ノロシや伝書鳩の時代ではないのだから当たり前なのだが。

 「近い」とか「遠い」の意味が混乱している時代に生きていることを、殺人事件であらためて感じいった。 そういえば、近くは高い、遠くは安い。 だから海外旅行に行く。 これは別の話か!