2012年9月14日金曜日

橋下徹という男



 「大阪維新の会」の橋下徹という男には、なぜか胡散臭さを感じる。 

 既成の政治家、政党、彼らが牛耳る政治に対する不信感が世間に拡散する中で、単純明快な物言いで扇動するスタイルが大衆受けしている。 だが、あの男には、祭りの神社の境内でインチキの安物を口車で売りつけるテキヤの怪しさが漂う。

 そもそも、あんな風に、自信過剰でべらべらとしゃべりまくる男がそばにいたら鬱陶しい。 いっしょに酒を飲みたい相手ではない。

 2012年9月13日付けの読売新聞朝刊は、橋下が中心になって旗揚げした新政党「日本維新の会」を特集していた。 その中で、国家主義右翼の元外務官僚評論家・岡崎久彦が、橋下をおおいに持ち上げていた。 この論評自体が論評の体をなしておらず、岡崎は橋下の掲げる政治スローガンが自分の右翼的思考と同じという理由で、橋下を買っている。 

 例えば、外交について。 岡崎は言う。 「日米同盟を基軸とし、『豪、韓国との関係強化』を目指すとした基本方針は明快だ。 民主党や自民党の政策よりも、米国や自由主義国との連携を重視する姿勢を鮮明にしている。 言葉を換えれば、『中国包囲網の形成』ということだ」

 従軍慰安婦問題について。 「橋下氏は、『証拠はない』『もしあるなら、韓国の皆さんに出してもらいたい』と当然のことを指摘した。 歴史認識がしっかりしているということだろう」

 さらに、教育については、「かなりわかっており、玄人といえるのではないか。・・・・・・・・大阪府知事時代には、教職員に国歌斉唱時の起立を義務づけた」

 右翼・岡崎の礼賛ぶりからよくわかるのは、橋下も国家主義的右翼思考の持ち主だということだ。

 政治不信が蔓延する中で、日本の国力が下降線をたどり、その一方、近隣の中国や韓国が国力を高めている。 こういう状況があるからこそ、橋下のような人物が国民のナショナリズム的感情・欲求不満に訴え、人気を高めることができるのは明らかだ。

 読売の同じ特集記事の中で、京大教授・佐伯啓思は、この点をしっかりと押さえている。

 「橋下は、常に簡単に実現できない目標を設定し、敵を作りながら敵を倒す、という手法をとってきた。 デマゴーグ型の要素が非常に強いポピュリズムともいえる。・・・大衆の中にある鬱積感情のようなものをうまく引き出し、自分のエネルギーに変えてしまえるまれな政治家で、小泉元首相に近い。・・・・・しかし、既成政党がダメだからといって経験不足の素人に政治を任せるのはあまりにリスクが高い」

 現在の日本は、第1次世界大戦での敗北を契機にドイツ帝国が崩壊したあと生まれたワイマール共和国の時代となんらかの共通点があるのだろうか。

 当時、民主的なワイマール憲法が導入されたが、政党が乱立し、政治の不安定化を招いた。そういう中で、ゲルマン民族至上主義を叫び、大衆の国民感情に訴えるナチスが台頭し、ヒトラーという化け物が誕生した。

 橋下がヒトラーほどの大物とは到底思えない。 が、人は道に迷ったとき、とんでもない方角へ向かってしまう。 怖いことだ。

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