2015年7月7日火曜日

「なでしこジャパン」って何?


                                                   2015年7月7日

 バンクーバーのサッカー女子ワールドカップで、なでしこジャパンは決勝まで進出し、最後まで諦めないカミカゼ的頑張りをみせたが、米国に完敗した。 その実力からして太平洋戦争同様、順当な結果だった。それでも、「準優勝」だと日本では大騒ぎしている。 負けた選手たちの帰国を大歓迎はヘンだから、やはり「準優勝」と言うしかないのだろう。

 だが、なんだかナショナリズムを煽る右翼政権の尻馬に乗っているような感じがしないでもない(太平洋戦争で負けた日本を「準優勝」とは言わない)。 ワールドカップのサッカーは、常に根の部分でナショナリズムとつながっている。 国旗を振り回す騒ぎ方はオリンピック以上のナショナリズムの発露だ。

 これは日本だけではない。 イスタンブールに住んでいたころ、サッカーの国際試合がある日は、大小さまざまなトルコ国旗を売る露店が道路沿いにずらりと並んだのを覚えている。 トルコ人の国家意識は格別高い。 彼らの愛国心は、難敵ドイツを相手にするとき絶頂に達し、興奮して銃を発砲するヤカラまで出てくる。

 敵との戦いのために集団で気持ちを高揚させる。 サッカーのワールドカップとはの疑似世界大戦なのだ。 

 米国でも、なでしこジャパンを叩きのめした夜(日本では朝)は歴史に残った。

 ニューヨーク・タイムズによると、試合を放送したフォックス・テレビの視聴者は2540万人で、米国の英語テレビが放映したサッカー試合の最高記録になった。 さらに、スペイン語テレビ・テレムンドの130万人を加えた総数2670万人は、昨年の男子ワールドカップ決勝ドイツ-アルゼンチン2650万人の記録をも超えた。
 
 米国の女子サッカー人気はわからないでもない。 国際サッカー連盟(FIFA)は増収賄などの悪事ばかりでなく、役に立つ地道な統計も集計している。 それによると、米国の女子サッカー人口は世界一の720万人、協会登録者だけで130万人にのぼる。 世界の女子サッカー人口は2600万というから、28%がアメリカ人ということになる。

 西海岸オレゴン州に住む日本人の女友だちにきくと、米国では学校内スポーツは男女平等の機会が与えられている。 とくにサッカーは幼稚園から大学まで女子スポーツとしても盛んだという。 ワールドカップを圧倒的強さで制覇する実力を生む底辺の広さがうかがえる。

 ただ、彼女のアメリカ人ボーイフレンドは若いころプロになるのを夢見たサッカー狂だが、女子サッカーには関心がなく、サッカーは男のものだという態度をかいまみせる。 女子サッカーが本物のメジャーになるには、もう少しなのかもしれない。

 翻って、日本の女子スポーツの現状に目を向けると、なでしこ人気はなんとも不思議な現象だ。

 日本の女子サッカー人口は約30万人、協会登録者は26000人くらい(2006年段階)。 ドイツは日本の人口規模に比較的近い(8200万人)が、7倍以上の220万人、登録者は38倍以上の106万人。 他の強豪国と比べ、日本の裾野は実に小さい。

 高体連登録選手数(2010年)で見ても、女子サッカーは8421人で他競技と比較すると少ない方だ。ちなみに、バスケットボール62598人、バレーボール61575人、卓球18994人、柔道5220人、体操2870人、等々。

 実際、日本の日常生活で女子サッカーをみかけることなど、テレビを除けばまったくと言っていいほどない。 いったい、どこで練習をしているのだろうか。 

 女性たちがサッカーをやっているのを見たことがないわけではないが、たいていは"冗談"の域を出るものではない。 「あら、ボールどこに行っちゃったのかしら?」「いやーねえ、ゴールに入っているじゃない」「ホント、だれが蹴ったのかしら」「ヘンねえ、ハハハハ!」

 メディアが伝える華麗な女子サッカーと現実世界がまったく結びつかない。 実に不思議なスポーツだ。 

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