2012年4月21日土曜日

とっても不思議な大時計



 初めて見る人は、それが大時計だと気付くのに、しばらく時間がかかるだろう。 いや、「大時計ではないかと気付く」と言い換えるべきかもしれない。 それにしても、長針も短針もない。 
 丸い文字盤(?)に等間隔で12の四角い穴があいていて、よく見ると、赤く光っている。 さらに、じっと見ると、緑色と黄色がひとつずつ光っているのがわかる。 自分の腕時計と見比べ、どうやら、緑色が短針、黄色が長針と推測できる。
 普通の視力の人でも、この大時計を見て、現在時間をすぐに言うことはできないだろう。 色弱の人はまったく識別できないに違いない。
 この意味不明の大時計は、多摩川の東京側、ガス橋と多摩川大橋の中間あたり、巨大な清掃工場の外壁にある。 住所でいうと、大田区下丸子2丁目。 
 工場の正式名称は「東京23区清掃一部事務組合 多摩川清掃工場」という。 「一部事務組合」というのは、地方自治法で定められた複数の自治体が共同して行う事業の主体になる組織だそうだ。 つまり、東京23区が共同してゴミ処理をしている工場ということなのだ。
 それはいいが、なぜ、こんな時計を設置したのだろうか。 工場の責任者ですら、この時計を見て、すぐに時間がわかるわけがない、と自覚している。
 どうして、そんなことがわかるかというと、工場の正面入り口横に、ご丁寧にも「壁面大時計の読み方」という説明の看板があるからだ。 とはいえ、この通りに歩行者はほとんどいない。 そこは旧多摩堤通りで、走り抜けるクルマばかりだ。
 だが、大時計だとわかるにしても、こんな場所に設置した理由がわからない。
 工場は、旧多摩堤通りと、さらに通りと平行に走る多摩川のサイクリングコースがある土手に面し、その先は河川敷の野球グラウンドと川の流れ。 
 サイクリングやジョギング、ウォーキングの人たち、野球に夢中の子どもたちが、ここで時間を知ろうとするとは思えないし、昼間は明るすぎて時計の発する光がよく見えない。 しかも河川敷からでは近過ぎて、ななめ横から見上げても時間を読み取れない。
 最もよく見えるのは、東京側ではなく、対岸の川崎側、日没から夜明けの間であろう。 ただ、こんな時間の河川敷は、東京側でも川崎側でも人通りはほとんどいない。 誰がこの時計を必要としているのか。
 多分、大時計を日々、いつも眺めているのは、川崎側のブルーハウスに棲むホームレスたちであろう。 「東京23区清掃一部事務組合」は、川崎のホームレスのために大時計を設けたのか。 東京都民の税金を使って。
 万が一そうだとしたら、大間違いの現状認識だ。 近ごろは、ホームレスでも携帯電話を持っているし、CASIOの腕時計くらいは、はめている。
 不思議な、不思議な大時計。 どなたか、この謎を解いてください。 

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