2014年10月31日金曜日

秋の一日


秋の心地良さを感じる日だった。 多摩川の丸子橋付近の河川敷をカメラを持って、ぶらぶら歩いた。 少しづつ増えてきた渡り鳥たちの羽ばたきをパチリ、水中で光るボラをみつけてパチリ。 悪くはない写真が撮れたが、ありきたりで面白くない。 そう思っていたときに、目に飛び込んできたのは、日射しに輝く見事なスキンヘッドの釣り人。

 白い顎ひげをたくわえているところを見ると、決して若くはないが、男の色気があるではないか。 こんな風に年齢を重ねていきたいと感じさせる佇まい。 この日最高の一枚。

 だが、丸子橋の下で、またもや楽しい出会いがあった。 とても美人のチンドン屋さん。 たった一人で、チンチンドンドン。 ちょっと奇妙な光景に、つい声を掛けてしまった。

 「何してるんですか」、「チンドン屋の練習」、「どこから来たんですか」、「雪が谷大塚」、「それなら多摩川まで来なくても、洗足池がいいじゃないですか」、「ええ、実は一度行って練習したら、近所のマンションの住人から『うるさい』って苦情があって」。

 話しているうちにわかったのだが、年のころは団塊世代。 でも、雰囲気はもっと若い。

 「私がまだ勤めていたとき、近所にチンドン屋さんが来たんです。 とても面白そうだったので、仕事やめたら習いにいっていいですかって聞いたら、いいって言ってくれたんです」

 それで、退職後、本当に習いにいったそうだ。 師匠は埼玉県の川越。 実際に街を練り歩くこともあるという。 そういうときは、師匠の奥さんが着物を貸してくれる。 「赤い振袖なんか着ることもあるのよ」。

 妙な女ではあるが、あっけらかんとして実に楽しそう。 ちょいと踏み込んで家族のことを訊いてみた。 「ちゃんと夫がいて、一緒に生活しているけれど、チンドン屋に関心はないわね」。 そりゃそうだろう、普通の男なら。

 「じゃあ、またね」。 しまった、名前と電話番号を訊くの忘れた。

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