2014年12月12日金曜日

判読不能な「日本思想全史」


 稀有壮大とも言える時間的スパンの長さとテーマ。 「神話時代から現代まで日本人の思考をたどるはじめての本格通史」と広告は謳う。 筑摩書房が最近(2014年11月)出版した清水正之著「日本思想全史」(ちくま新書、1100円)にひかれて買おうと思ったが、とりあえず近くの図書館に行って借りた。

 早速読み始めてみて驚いた。 日本語なのに文意をまったく理解できないのだ。 例えば、「はじめに」は、こんな文章の羅列だ。

 「本書がとる視点は、選択-受容-深化としての思想史である。その特徴として、選択・受容の局面における比較的視点ないし、相対主義的視点の把持ということを指摘しておきたい」

 普通のオツムの人でもノーベル賞受賞者でも唖然としてしまうだろう。

 この本は一体なんだ! まるで暗号ではないか。 人が理解できないように書く文章。 コミュニケーションの手段である言葉の役割の否定。

 善意に解釈すれば、判読不能な悪筆の備忘録。 他人は読めないけれど、もしかしたら、すばらしい内容かもしれない。 あるいは、この分野の専門家だけが理解できる業界出版物。

 倫理学の大学教授だという著者が学生とどうやって相互理解をしているのか興味津々だ。 理解困難な本を出版する筑摩書房編集者の思考も世間離れしている。 なぜなら、若者ばかりでなく日本人全般の本離れが深刻になっている現状を最も深刻に受け止めているのは出版社であるはずだからだ。

 「はじめに」を読み終わる前に、パズルの解読に疲れて放り出した。 買わないでよかった。 きょうは図書館へ返しに行こう。 こうして、本離れとは言わないが、本屋離れが一人増えた。 

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