2013年2月12日火曜日

2020オリンピックはイスタンブールで



 古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの著作「歴史」は、当時のギリシャ世界を記述したものだが、地理的には、黒海とエーゲ海を結ぶボスポラス海峡一帯に、かなりの重点を置いて描いている。 古代ギリシャ世界とは、実は現代のトルコのほとんどを含んでいることがわかる。

 古代ギリシャ時代、海峡の西がヨーロッパ、東がアジアと呼ばれるようになり、以来、この細長い海峡がヨーロッパとアジアの境界線となった。 この美しい水の景観を見下ろす都市はコンスタンティノープルと名付けられた。 じっくりと醸成された歴史をそのままに、やがてイスラムの風味が加えられ、現在の蠱惑的な街イスタンブールへと豊潤に熟していった。

 ボスポラスに面したオープン・レストランは夏がいい。 水を加えると透明な液体が白く濁るアニス酒「ラクー」のグラスにアイスキューブをひとかけら入れる。 爽やかなラクーの香り、それに、海峡で獲れた小さなカタクチイワシのフライ「ハムシ・タヴァ」。 レモンを絞る。 地中海からの海風がスパイスになって、ボスポラスの味を醸し出す。 そこには、数千年の歴史が詰まっている。

 海峡には、自動車専用の2本の吊り橋が架かっている。 毎年、秋の1日、クルマの通行が止められ、市民参加の「ユーラシア・マラソン大会」が開かれる。 名称のスケールの大きさがいい。 アジア側をスタートし、ボスポラス海峡を渡って、ヨーロッパ側にゴールする。 アジアからヨーロッパへ、ボスポラス海峡を見下ろし、自らの足で渡る感動がたまらない。

 この土地は、日本などというクニが誕生するずっと前から、世界をつなぐ十字路だった。 そして、おそらく今もそうだ。 発展するイスラム世界を代表するからだ。 9・11以降、異なる宗教・文化・人間が、互いにぎこちなさを感じるようになった。 イスタンブールは、長い年月にわたり、そういう差異を受け入れないにしても、認めあい、折り合いをつける歴史をつむいできた。

 今年、2020年オリンピックの開催都市が決まる。 東京もイスタンブールも立候補している(もうひとつの都市はマドリッド)。 この時代の世界、東京でオリンピックを開催しなければならない理由は意味不明だが、初のイスラム都市での開催となるイスタンブールには大いなる意味がある。 日本外務省によれば、トルコは非常に親日的な国だそうだ。 日本人もトルコを大好きだという。 そうであれば、日本人は東京など見捨て、イスタンブールでのオリンピック開催を、そろって応援しようではないか。

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