アルコールを注入したのは浅間山頂上のベンチだった。 そのあと、ほろ酔い気分でチンタラと歩いているうちに、化け物が圧し掛かってくるような異様な枝ぶりの巨樹が目の前に立ちはだかっているのに気付いた。 太い腕を振り回している巨人にも見えた。 雑木林の中で、圧倒的なオーラを発していた。 この木は、いったい何だ!! 決して酔っていたからではない。 明らかに精霊が宿っているではないか。
幹に下がっていた札には「タブノキ」と書いてあった。 タブノキの巨樹は、日本中の寺や神社で見ることができるし、日本アニミズムの典型的な信仰対象になっている。 無信仰の人間をも圧倒するパワーを発するのは当然だったのだ。
<タブノキ> 分類 /: 植物界 Plantae : 被子植物門 Magnoliophyta : 双子葉植物綱 Magnoliopsida : クスノキ目Laurales : クスノキ科 Lauraceae : タブノキ属 Machilus : タブノキ M. thunbergii
クスノキ科タブノキ属の高さ25mに達する常緑高木で直径は3mにもなる。イヌグス・タマグス・ヤマグスとも称される。単に「タブ」とも。ワニナシ属(Persea、アボカドと同属、熱帯アメリカなどに分布)とする場合もある(学名:Persea thunbergii)。
若い枝は緑色で、赤みを帯びる。芽は丸くふくらむ。 葉は枝先に集まる傾向があり、葉は長さ8-15cm、倒卵形。革質で硬く、表面はつやがあって深緑。花期は4-6月。黄緑色であまり目立たない花を咲かせる。8-9月ごろ球形で黒い果実が熟す。
日本では東北地方―九州・沖縄の森林に分布し、とくに海岸近くに多い。照葉樹林の代表的樹種のひとつで、各地の神社の「鎮守の森」によく大木として育っている。また横浜開港資料館の中庭の木は「玉楠」と呼ばれ有名である。
樹皮は染料、材は器具材、家具材、建築材、ベニヤ材、枕木などに用いられ、有用な樹種である。材は古くから船材に適し、昔、朝鮮半島から日本に渡来した船は、すべてタブノキの材で造られたという。
朝鮮語の方言におけるトンバイ(独木舟)がなまってタブとなり、タブを作る木の意、とする説がある。別名(地方名)のダマ、ダモなども同じ。
八丈島に、古くから伝わる絹織物である「黄八丈」は、タブノキ(島ではマダミと呼ばれる)の樹皮を、染料として利用した。黄八丈の色は、黄色を主にして、樺(茶)色、黒とあり、タブノキは樺色の染料にする。今で言えば、草木染めである。国の伝統工芸品に指定されている。
ちなみに「八丈島」と言う地名は、この特産品である絹織物の名が、そのままついた。八丈島には、古くから都の流人によって、絹織物の技術が伝えられた。1丈は約3mで、8丈の長さで絹織物は織られた。美濃八丈、尾張八丈、秋田八丈など各地に特産品がある。
タブノキの樹皮には水と混ぜると粘液を生ずる成分が含まれ、古来、たぶ皮と呼ばれ、線香や 練香の粘料として使われた。 クスノキのような芳香はないが、材は良質で、建築・家具・ 細工物などに広く利用される。
古代の信仰で対象となった大きな樹が霊(タマ)の木であり、それが タモ、タブと変化 したとも考えられている。 また『万葉集』の大伴家持の歌、 「磯の上の都万麻(ツママ)を見れば根を延へて 年深からし神さびにけり」のツママは、タブノキとされている。
瀬戸内海に面した山口県玖珂郡和木町関ヶ浜にある疫神社には、古くからの習俗が残っている。ここには、根回り7m、高さ20m、樹齢500年のタブノキがある。 疫神は疫病払いの神で、そのむかし、この樹に大蛇が巻きついたという故事に倣って毎年藁で作った大蛇をタブノキに巻きつけ、お祓いをした後、当屋の人々が獅子頭をかぶって家々を回って疫病払いをする。
昆虫採集マニアたちは、クワガタやカブトムシがタブノキの樹液に集まることをよく知っている。
福井県坂井市には、樹齢250年のタブノキを眺めながらコーヒーを飲める喫茶店「カフェ タブノキ」がある。(℡ 0776-81-3778 、tabunoki[★]mikuni-minato.jp)
われわれが登った高麗山から近い平塚市博物館敷地内には、長さ4mほどのタブノキの古木が置いてある。 1964年に平塚駅の地下道工事中に地下5mのところでみつかった埋もれ木だ。 樹齢は300年、年代測定では1950±50年前のもの。 発見されたのは砂礫質の地層。 2000年前の駅付近は海浜で、発見されたタブノキは漂着物と推定された。 現在、平塚駅から海岸までは1.4kmもある。
ウエブには、”大樹タブノキからの贈り物!特許取得済み製法「抗炎症剤」”というスキンケア商品の広告も載っている。
家庭学習研究社「3年生におすすめの本」には、「 大きなタブノキ」という絵本がある( 木暮 正夫・作、野村 たかあき・絵)。
夏の暑い日の昼下がり、とつぜん、にわか雨がおちはじめました。とうげ道のわきにある、太くてたくましいタブノキの下で、馬かたの六さん、旅のおぼうさんと、ひきゃくが、雨やどりをしながら、話していました。
「りっぱな大木ですなあ。これだけの雨なのに、一てきのしずくもおちてこんですからなあ。」「村のみんなは、この木を『千年タブ』とよんで、大事にしとるんだよ。」「人は、親から子へ、まごへといのちをつないでいきますが、この木は、一代で千年も生きて、なおも木のいきおいがさかん。まだまだ何百年もいきつづけるでしょう。」
そのころから約二百年の月日が流れました。峠のようすもすっかりかわってしまい、峠の下のほうでは、ダムの工事がはじまっていました。ダムができるとタブノキは水の底にしずんでしまいます。村の分校の子どもたちは、あかね先生にうったえました。
「先生、この木をたすけてやれないの?」 あかね先生や校長先生も、タブノキをなんとか守りたいとおもっています。そこで、木のお医者さんに、タブノキが高いところにうつしかえられるかどうか、くわしくしらべてもらうことにしました。
●タブノキは、うつしかえるには、年をとりすぎていました。千年以上もの間、村の人の暮らしとかかわり、世の中を見つめ続けてきた『千年タブノキ』は、どのような形で、残すことができたのでしょうか。世代をこえた長い時間の中での、命のつながりを感じてください。
なかなか読ませるではないか。
日本中のタブノキの巨樹を訪ねてみるのも面白いだろう。 世間には、色々なことをやってくれる人がいる。 全国巨樹探訪記http://www.hitozato-kyoboku.com/tabunoki.htm#top「タブノキ」は、そういう人の力作のひとつだ。
このブログは、以下のサイトを切り貼りして作り上げた。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』/シリーズ自然を読む 樹木の個性を知る、生活を知る「タブノキ」(http://elekitel.jp/elekitel/nature/2004/nt_28_tabu.htm】/樹木図鑑(zukahttp://wwwsv88/jumoku-zz-tabunoki.htm)/http://www.wood.co.jp/wood/m158.htm/全国巨樹探訪記http://www.hitozato-kyoboku.com/tabunoki.htm#top「タブノキ」
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